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動的平衡の記録
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上野の国立西洋美術館で開催中の「大英博物館 古代ギリシャ展」に行ってきました。

平日なのに結構な混み具合でした。夏休みが終わったとはいえ、
まだまだ人出はあるようです。

入り口に注意書きがあり「性的な解説等がありますがこれは当時の文化を背景にしたもので
性を面白おかしく書いている訳ではありません。云々」というようなもの。
???と思いつつ展示を見ていくと「ははぁ」と思うところがありました。

古代ギリシャでは美しい肉体を持つことが精神の美しさと同一視されており、
特に男性の肉体の美しさを賛美していました。
オリンピックなどはその際たるもので、鍛え上げられた肉体をそれぞれ競うわけです。
そして、男性の同性愛もまた当たり前でした。
若い青年と年配の男性の絡んだ絵が壺に描かれていたりもするのです。

また、酒の神バッコスの従者サティロスは奔放な性の象徴でもありました。
当然サティロスが若いニンフと絡んでいる大理石の彫刻もあります。

そして肉体の美を絶対的な価値観に据えていたということは
逆に醜いもの、いわゆる障害者などには厳しい目が向けられていたのです。
そういった人々は喜劇役者になったり、拳闘士などで見世物になるしかなかった。

それは当時の文化的背景から生まれたものでした。

しかし、ギリシャはローマに滅ぼされてしまいます。
ギリシャ時代の彫像の多くはブロンズでした。そのため、戦争が始まると
武器の調達のために多くが熔かされて失われてしまったのです。
現存するのはほんのわずかで、それすらも時間に晒されてボロボロの状態でした。

今回の目玉である円盤投げもそのひとつでローマ時代の模刻です。
コピーであってもそのすばらしさは減するところがありませんが、
巨大な大理石を目にすると、オリジナルはどんなだったろうと思いを馳せました。

オリンポスの十二神、ギリシャ神話、ギリシャ悲劇、哲学etc。
「ギリシャはローマに滅ぼされたが文化ではローマを征服した」という言葉が
ありましたが、まさにその後の西欧世界に絶大な影響をもたらしたのでした。

世界史的には皮肉なことに、ギリシャの文化的な遺産を引継ぐのはアラブ世界になります。
ギリシャの天文学や数学はキリスト教の拡大した世界では異端のものとされ
それが再びヨーロッパ世界に戻ってくるのは十字軍の後になってしまうのです。

イタリアのルネッサンスとはギリシャ・ローマの精神をもう一度復興させよう
ヨーロッパ世界に取り戻そうという運動でした。
美術史でそのあたりの著作を読むと、しつこいほどにギリシャ・ローマの
正統な継承者である、ということが出てきます。
このへん二千年以上同じ国土で生きている日本人にはわかりにくいかも。
ローマはイタリアにあるんだから継承者なのは当たり前じゃないの?
なんて思っていましたが十字軍までの大きな断絶があるので
そこらへん強調しないといけなかったのでしょう。
特に都市国家のイタリアは、周囲の大国に侵略されてオーストリアやスペインの
支配下の時代も長いです。イタリアが統一され王国になったのが1861年。
共和国になったのは1946年。つい最近のことです。

そしてギリシャの様々な芸術は、七つの海を制した大英帝国の博物館に収蔵され
現在世界各国を巡る旅に出ています。
今回の展覧会はその一端で、ロンドンオリンピック時には大英博物館に帰国し、
オリンピック後に再び世界を回る予定だそうです。

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