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動的平衡の記録
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私の韓国への認識に目を開かせてくれた呉善花さんの新刊本が5月に出ていました。

震災後の本だったので、どんなことが書かれているかと思ったのですが、
内容は彼女が日本文化に触れて様々に感じて、そのルーツとなる日本的精神の
ありかたを模索してきたその考察を書いたものです。

まえがきに、原稿を仕上げ読み直していたときに震災が起きた、とあるので
震災後に新たに書かれたものではありませんでした。
しかし、彼女は非常に深く日本文化を愛しており、そこかしこに日本の独自性を
見せてくれるので、久しぶりにホッとしました。

ドナルド・キーン氏もそうですが、海外の方の目を通して初めて知るということも多く、
こういった方々の本を読むと、日本文化の良いところが浮き彫りになって
逆に海外とはこうも認識が違うのか!と唖然とすることもしばしばです。
その筆頭が震災時の略奪がなかったこと、ですね。
これを言うと日本にも略奪はあったという方がいますが、基本海外の略奪は
軍隊が鎮圧するような大規模なものです。
日本であったのは、窃盗、空き巣、引ったくりというようなもの。
また、津波で流された金庫が持ち主に返されたりすることも
海外からすれば、信じられないことのようです。

そして、自然への認識の仕方…日本人は自然と自分を一体化している。
その視点は、遠く石器時代、縄文時代に育まれ原始的なアニミズムとなった。
さらに、大陸から新しい技術や文化が流入してくれば本来消えてゆく運命の
それらが、現代人にまで引継がれている、それはなぜなのか?

島国である日本には大陸から様々な文化が流入してきても、
それらをゆっくりと消化吸収し自らのものとする時間的余裕があった。
その際に今までのものを否定するのではなく、融合という形をとった。
仏教も「日本仏教」となり、政治の律令制等もお手本は大陸にありながら
日本に向かないと思った科挙制度や宦官は採用しなかった。
ともすれば「いいとこ取りのツギハギ」と見られがちだが、
実はそれこそが日本の独自性の表出である。
漢字を使いつつオリジナルのひらがなカタカナを作ってしまう。
そして世界に類を見ない、表音文字と表意文字の両方を使うようになった。

日本人は「ただしく生きる」ことよりも「美しく生きる」ことに重きを置く。
悪人と言われるよりも卑怯者と言われるほうが屈辱だ。
そういった日本独特の美意識というべきものをすくい出して見せてくれます。

数年前に話題になった「文明の衝突」でも、日本は一国で「日本文明圏」を作っている
という表現がありました。
中華文明圏に属しているように見えながら、世界のどこともつながっていない、と。

著者の呉善花氏は現在は日本に帰化しており、日本人です。
彼女は縄文文化の精神性が日本文化の最古層に横たわっているといい、
その上に農耕アジア的な精神性が重なり、さらに明治以後
西欧の近代的な精神性が重なるという多層構造をもっていると…。
ここでもキーワードは縄文ですよ!

彼女の著作はほとんど読んでいるので、かなり重複する部分もありましたが
ちょっと元気が出た気がします。

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